きろうの忘備録

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H31年度 航空大物理

模範解答

H31
問題番号 解答 関連項目
問7(a) 1 音波
問7(b) 1 波の性質、音波
問8 3 剛体のつり合い
問9 1 力のつり合い、抵抗を受ける運動
問10 5 円運動、力のつり合い
問11 2 摩擦力、慣性力、等加速度運動
問12 2 等加速度運動
問13 4 直流回路、ホイートストンブリッジ回路
問14 5 コンデンサ
問15(a) 5 電流の作る磁場
問15(b) 3 相互誘導、ファラデー電磁誘導の法則

問7

f:id:hikirou:20200526164207j:plain (a)問題文の通り丸暗記。

(b) 振動数f=20kHz。音速Vは式に代入して


331.5+15℃\times 0.6=340.5m/s

したがって、波長は


\lambda=\frac{V}{f}=\frac{340.5m/s}{20kHz}=17.0\times 10^{-3}m=1.7cm

音速

音速a流体力学を用いて


a=\sqrt{(\frac{dp}{d\rho}_s}

となる。sの下添え字は等エントロピー変化(高校物理でいう断熱過程。)でありポアソン式が成立するので


a=\sqrt{\gamma \frac{p}{\rho}}=\sqrt{\gamma RT}

となる。

  • 比熱比\gamma: 空気の場合1.40(高温で1.33など厳密には温度に依存)
  • 気体定数R:高校物理出てて来る(普遍)気体定数8.3J/(kg\cdot K)とは異なるので注意。普遍気体定数を分子量mで除したものとなるので、気体の種類に依存する。空気の場合287J/(kg\cdot K).

問題文中の近似式は、絶対温度Tをセ氏温度tに置き換え、(T=t+273を代入)t=0℃の周りで一次の近似、すなわち接線をひいたものである。

したがって、音速は温度の平方根に比例する形となる。

問8

f:id:hikirou:20200526164229j:plain 一様な物体のため、重量は面積に比例することがわかる。よって、(切り取られて残った側の重量):(切り取られた側の重量)=S-S_2 : S_2とわかる。重心周りのモーメントのつり合いより


(S-S_2)\times x = S\times d \\
x=\frac{S_2}{S-S_2}d

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重心周りのモーメントのつり合い

問9

f:id:hikirou:20200526164248j:plain 油滴に働く空気抵抗の大きさをfとすると力のつり合いより


mg=f

文中より


f=krv

また、質量について


m=\frac{4}{3}\pi r^3 \rho

以上3式より


v=\frac{4\pi r^3 g}{3k}\rho

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油滴に働く力

問10

f:id:hikirou:20200526164313j:plain 糸の張力をTとする。鉛直方向の運動方程式(力のつり合い)。※力のつり合い時は加速度0である。したがって力の釣り合の式は加速度0の場合の運動方程式と同値である。


m\cdot 0=T cos\theta -mg

また、水平方向について円運動の運動方程式


m\frac{V^2}{R}=Tsin\theta

以上2式よりTを消去して

f:id:hikirou:20200526171314j:plain
球に働く力


R=\frac{V^2}{gtan\theta}

問11

f:id:hikirou:20200526164332j:plain (a) 平板と物体の間に働く摩擦力をf,垂直抗力をN_2、平板と床の間に働く垂直抗力をN_1とする。平板と床の間には摩擦力が働かない。 平板について水平方向の運動方程式


Ma=F-f

ここで物体について鉛直方向の力のつり合い

mg=N_2

摩擦力について

f=\mu 'N_2

より

Ma=F-\mu 'mg

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各物体に働く力
(b)

距離を求める方法

平板の加速度について

a=\frac{F-\mu ' mg}{M}

物体の加速度をbとすると運動方程式

mb=f \\ \therefore b=\mu'g

よって時間t経過したときの平板と物体が進む距離はそれぞれ


x_a=\frac{1}{2}at^2 \\
x_b=\frac{1}{2}bt^2

その差がlとなるので


x_a-x_b=l=\frac{1}{2}(a-b)t^2 \\
t=\sqrt{\frac{2Ml}{F-(M+m)\mu'g}}

慣性力を用いる方法

平板上の観測者で考える。平板は右側に加速度aで運動するため、小物体は左向きに慣性力maを生じる。左向きを正として、小物体の加速度をb'として運動方程式を立てると


mb'=ma-f \\
b'=a-\mu'g

小物体は平板から見て左向きにlだけ進むので


\frac{1}{2}bt^2=l \\
t=\sqrt{\frac{2l}{b}}\\
=\sqrt{\frac{2Ml}{F-\mu'(M+m)g}}

f:id:hikirou:20200526171507j:plain
平板上の観測者における、小物体に働く力

問12

f:id:hikirou:20200526164356j:plain

等加速度運動の式


v^2-v_0^2=2ax

に代入するだけ。


a=-0.50m/s

問13

f:id:hikirou:20200526164425j:plain まず下図のように、10Ωと20Ωの直列抵抗をまとめて30Ωの一つの抵抗に、可変抵抗Rと60Ωの並列抵抗をまとめて、R'の一つの抵抗とする。

f:id:hikirou:20200526171557j:plain
回路図の簡素化

検流計に流れる電流は0となるため、R'、40Ωの抵抗を流れる電流は共通のI_1、30Ωと50Ωの抵抗を流れる電流は共通のI_2となる。

抵抗R'と30Ωの抵抗の電圧(赤線と青線)は等しいので

R'I_1=30I_2

同様に

40I_1=50I_2

また回路全体についてキルヒホッフの法則より

16V-30\Omega I_2-50\Omega I_2=0

以上より


I_1=0.25A \\
I_2=0.20A\\
R'=30\Omega \times \frac{I_2}{I_1}\\
=24\Omega

よって、R'について並列抵抗の合成式


\frac{1}{60}+\frac{1}{R}=\frac{1}{R'}\\
R=40\Omega

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回路図
f:id:hikirou:20200526172435j:plain
並列抵抗の合成

問14

f:id:hikirou:20200526164450j:plain C1,C2に蓄えられた電荷のうち、Bの政局側に近いほうを正としてそれぞれq_1,q_2とする。

f:id:hikirou:20200526172458j:plain
スイッチをN側につけたときの回路の様子

本来ならば十分に充電され、コンデンサーの負極側の電位が、図でいう黒色の電位に低下するまで低下するが、途中で充電を切っているためそこまで下がりきらず、少し高い状態となっている。(青色で表現)。(このように、回路の問題において、等電位のところを同じ色の線で結ぶことは理解の助けとなる。例えば、素子(抵抗やコイル、コンデンサーなど)の両端が等電位の時は電流が流れない、逆もまた然り)。

このとき問題分より


q_1+q_2=35\mu C

次にスイッチをM側に切り替えた時を考える。この時、C1,C2に蓄えられた電荷を、図の向きを正としてそれぞれq_1',q_2'とする。(コンデンサーの問題ではどちらを正にとっても良いが、必ず定義しておかなければならない。+側の極版が電位が高いことになるからである。また極版の両サイドは必ず同じ大きさで正負が逆の電荷が蓄えられている。)

f:id:hikirou:20200526172944j:plain
スイッチをM側に切り替えたときの回路の様子

この時図を見ると赤線で囲った部分がスイッチの開閉前後で孤立していることがわかる。ここでは必ず電気量(すなわち電子の数)は合計で一定でなければならない。(電気量保存則)


q_1'+q_2'=+q_1+q_2=35\mu C

また、この回路についてキルヒホッフの法則を適用すると


28V+\frac{q_1'}{C_1}-\frac{q_2'}{C_2}=0
\\
q_2'=68\mu C

したがって、C2の両端の電圧は


V=\frac{q_2'}{C_2}=\frac{68\mu C}{4\mu F}=17V

問15

f:id:hikirou:20200526164504j:plain

(a)

まずコイル1が作る磁場を考える。コイルが作る磁場なので、円形電流が作る磁場の公式


H=N\frac{I}{2r}

を使いたくなるかもしれないがここでは不適当である。なぜならばこれはコイルが十分まとめられて今回のように長さLになるようなことがない場合に適用可能だからである。

したがって、ソレノイドコイルの公式

H=nI

を用いる必要がある。巻き密度n=\frac{N_1}{I}なので、磁束密度

B=\mu_0H \frac{N_1 I}{L}

よって磁束は


\Phi=BS

ここで面積Sを求める。コイル2の断面積は\pi a^2であるが、角度が\thetaだけ傾いている。したがって

S=\pi a^2 cos\theta

したがって、


\Phi=\frac{\mu_0N_1I}{L}\pi a^2cos\theta

(b)

まず相互インダクタンスの定義について考える。コイル1に流れる電流Iの時間変化量\frac{\Delta I}{\Delta t}に対し、コイル2に発生する誘導起電力がVの時、相互インダクタンスをMとすると


V=-M\frac{\Delta I}{\Delta t}

となる。したがってこのような形に変形すればいいだけである。

コイル2に発生する誘導起電力は、ファラデー電磁誘導の法則より


V=\frac{\Delta \Phi}{\Delta t} \times N_2
\\
=\frac{\mu_0N_1N_2\pi a^2cos\theta}{L}\frac{\Delta I}{\Delta t}

したがって、式を見比べて


M=\frac{\mu_0N_1N_2\pi a^2cos\theta}{L}

となる。

※電磁気の分野でよく出てくる-の符号は初学者はあまり気にする必要はない。本来は起電力の向きはきちんと決まり事があるため、負の符号をつける必要がある。しかしながら高校物理の範囲内では「逆起電力が発生するというのをわかりやすくするためにつける」といったお茶の濁され方がよくつかわれる。

解説記事一覧

下の記事内にまとめてあります。

はじめに 航空大過去問 - ひきろうの忘備録