きろうの忘備録

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計器飛行方式で飛ぶ①法規制編

はじめに

MSFSで計器飛行方式でバロンで高知空港から大分空港まで飛行してみましょう。飛行計画からフライトまでの一連の流れをご紹介します。

免責事項

このブログで使われる資料、プロシージャ等はネット等で公開されている資料を元に構成されており、いかなる団体の規定、手順等と無関係です。また、実際に飛ばれている方からすると非効率な運用になっている場合があります。 その他、現実世界の運用にそのまま適用できません。あくまで雰囲気を楽しんでもらえればと思います。特にATCはMSFSのものは周波数も文言もかなり違っているため、雰囲気を楽しんでいただければと思います。

計器飛行方式の法規制(概略)

ここで計器飛行方式(IFR)について簡単に関連規制等まとめてみましょう。

計器飛行証明(航空法34条施行規則66条)

計器飛行等を行うには計器飛行証明が必要となります。(飛行機の定期運送用操縦士、准定期運送用操縦士は除く) 計器飛行等とは

  1. 計器飛行
  2. 計器航法による飛行のうち、110kmまたは30分を超えて行う飛行
  3. 計器飛行方式による飛行

となる。すなわち計器飛行方式(IFR)で飛ぶには計器飛行証明が必要となります。

計器飛行証明

計器飛行方式とは(航空法2条)

IFRとは以下のように定義されています。

  1. 管制圏がある空港等からの離陸及びそれに引き続く上昇飛行又は着陸及びそのための降下飛行を、管制圏又は管制区において、国土交通大臣が定める経路又は大臣が与える指示による経路により、大臣が与える指示に常時従って行う飛行の方式

  2. 情報圏がある空港等からの離陸及びそれに引き続く上昇飛行または着陸及びそのための降下飛行を、情報圏(管制区を除く)、大臣が定める経路により、大臣が提供する情報を常時聴取して行う飛行の方式

  3. ①に規定する飛行以外の管制区における飛行を大臣が経路その他の飛行の方法について与える指示に常時行って従う飛行

計器飛行方式で飛行しなければならない空域(航空法94条、94条の2、施行規則198条の6、告示338)

  1. 計器気象状態(IMC)の管制区、管制圏、情報圏
  2. 特別管制空域(PCA)
  3. 29,000FT以上の空域

また厳密にいうと国内法では規制されていませんが、洋上管制区のFL200以上はICAO規則でクラスAに分類されておりこの空域も計器飛行方式に限定されています。

その他、非管制空域(クラスG)である天草、但馬、調布飛行場に関してはIFRにより離着陸が例外的に可能です。

装備品(航空法60条)

計器飛行方式で飛行する航空機には以下の装備品が必要となります。

航空機の航行の安全を確保するための装置(施行規則145条)

  1. ジャイロ式姿勢指示器
  2. ジャイロ式方向指示器
  3. ジャイロ式旋回計
  4. すべり計
  5. 精密高度計
  6. 昇降計
  7. ピトー管凍結防止装置付き速度計
  8. 外気温度計
  9. 秒刻み時計
  10. 機上DME装置
  11. 次に掲げる装置のうち、その飛行経路にかかわる飛行経路に応じ、当該飛行の経路を構成するNDB、VOR、タカンまたは測位衛星からの電波を受信数するためのもの イ.方向探知機 ロ.VOR受信装置 ハ.機上タカン装置 二.衛星航法装置

無線電話、トランスポンダー(施行規則146条、告示200号)

  1. 管制区または管制圏を航行する場合:無線電話(VHF無線機)
  2. 管制圏、進入管制区、10,000ft以上の管制区:トランスポンダー
  3. 情報圏又は民間訓練試験空域を航行する場合:無線電話

搭載燃料(航空法63条施行規則153条)

航空運送事業以外の計器飛行方式により飛行する飛行機は以下の燃料を搭載する必要があります。

  1. 着陸地までの飛行を終わるまでに要する燃料の量
  2. 巡航高度で45分間飛行することができる燃料
  3. 代替空港を計画する場合には当該着陸地から代替空港等までの飛行を終わるまでに要する燃料の量

最低気象条件

最低気象条件には離陸、離陸の代替飛行場、着陸、着陸の代替飛行場の4種類があります。

離陸の最低気象条件

まず大きく分けて離陸後のトラブル時に離陸飛行場に戻らず離陸の代替飛行場に行くことを前提とする「TKOF ALTN AP FILED」と、目的地に戻ることを前提とする「AVBL LDG MINIMA」の2種類があります。さらにSIDが「飛行方式設定基準(新基準)」と「暫定方式設定基準(旧基準)」のいずれかによって「AVBL LDG MINIMA」の取り方が異なってきます。

RVR

視程が悪い状態でも飛ぶIFRは「航空灯火」が見えるかが重要となります。RVRとはざっくりいうと「滑走路の灯火(滑走路灯、滑走路中心線灯)」が見える範囲となります。

CMV

CMVはRVRが使えない状態の時に、「地上視程より灯りはもっと遠くまで見えるはずだよね?」みたいな感じで地上視程に係数をかけるものです。CMVは「離陸、CAT2,3、周回進入、代替飛行場」の時は使えません。逆に言うと「CAT-I、非精密進入の直線進入の着陸の最低気象条件(ランディングミニマ)」のみでRVRの代わりに使用することができます。

昼間夜間
進入灯 & 滑走路灯地上視程×1.5地上視程×2.0
滑走路灯のみ地上視程×1.0地上視程×1.5
上記以外地上視程×1.0適用なし

TKOF ALTN FILED(新基準/旧基準)

多発機にあっては離陸の代替飛行場を設定することによりより厳しい条件での離陸が可能となります。(※例外あり)基本的にジェネアビ機では片発不作動時にSIDが要求する上昇勾配を維持できないため適用はできません。詳細は割愛。

AVBL LDG MINIMA

SIDが新基準、旧基準で少し異なってきます。 新基準の場合

CAT-I精密進入CAT-Iの最低気象条件の値に等しいRVR
非精密進入非精密進入のMDHに等しい雲高(100ft切り上げ)、最低気象条件の値に等しいRVR
周回進入周回進入のMDHに等しい雲高(100ft切り上げ)、最低気象条件の値に等しい地上視程

旧基準の場合、進入方式にかかわらず、着陸の最低気象条件の決心高に相当する雲高、最低気象条件に相当する地上視程

離陸の代替飛行場の最低気象条件(AIP AD2)

離陸の代替飛行場に設定できる最低気象条件。今回は設定しないので詳細は割愛。

着陸の最低気象条件(AIP AD2)

着陸の最低気象条件はAIP AD2の各空港の計器進入のチャートに用いられる。直接には後述する「計器進入開始の可否判断」「進入継続の可否判断」の用いられる。間接的に前述のとおり他の最低気象に用いられる。

目的地飛行場に対する代替飛行場のための最低気象条件(AD1.1-6.10.1.6)

目的地飛行場に対して代替飛行場を設定する場合、その飛行場での気象の予報値が以下の基準を満たしていなければなりません。

CAT-I非精密進入のMDHに等しい雲高(100ft切り上げ)、及び最低気象条件の値に等しい地上視程
非精密進入非精密進入のMDHに200ftを加えた雲高(100ft単位切り上げ)および最低気象条件に対して1000mを加えた地上視程
周回進入周回進入のMDHに等しい雲高(100ft単位切り上げ)、及び最低気象条件の値に等しい地上視程

計器進入中の気象判断

計器進入を行うにあたって次の三つのタイミングがあります。

  1. 計器進入開始の可否判断
  2. 進入継続の可否判断
  3. 進入限界高度未満への着陸のための進入判断

計器進入開始の可否判断(AIP ENR 1.5-2.2.1.4)

計器進入開始前において、目的飛行場の気象状態が最低気象条件の値(視程、RVR)を満たさない場合は管制にその旨通報し、大気又は代替飛行場へのクリアランスを要求しなければなりません。

進入継続の可否判断(AIP AD1.1-6.10.1.1)

いずれかの点で行う

  • 最終進入フィックス(FAF)
  • アウターマーカー(日本には存在せず)
  • 飛行場標高から1000ftの地点
  • その他特別に認められた地点(航空運送事業の運航規程を想定)

このシムではFAFでおこなうとします。比較に用いる最低気象条件はRVRとします。RVRが利用できない場合のみCMVを用います。ただし周回進入にあっては地上視程のみ使用可能です。

進入限界高度未満への着陸のための進入判断(AIP AD1.1-6.10.1.1)

進入限界高度(DA/H,MDA/H)において適切な目視物標を視認し、継続的に識別維持が可能である場合のみ、進入限界高度未満への着陸のための進入を行うことができます。非精密進入、CAT-I精密進入の場合は

  1. 進入灯の一部
  2. 滑走路進入端
  3. 滑走路進入端標識
  4. 滑走路末端灯
  5. 滑走路末端識別灯
  6. 進入角指示灯
  7. 接地帯または接地帯標識
  8. 接地帯灯
  9. 滑走路灯
  10. 進入灯と同時運用されている直線進入用進入路指示灯
  11. 指示標識

目的地の代替飛行場を設定しなくていい条件(AIC 036/09)

AICの「航空法施行規則第153条の改正について」に記載されています。目的地の代替飛行場を設定「しなくて」いい条件は

  1. 着陸地に計器進入方式が設定されていること
  2. 着陸地の到着予定時刻の前後それぞれ2時間の間、次の気象条件が確保されること。
  3. 雲高が当該機に適用可能な計器進入方式の進入限界高度として定められた最小の高度より少なくとも300m(1,000ft)高いこと
  4. 視程が当該機に適用可能な計器進入方式の最低気象条件としてとして定められた最小の値より少なくとも4,000m以上上回る値を示すこと、または5,500m以上の値を示すこと

TAFや飛行場時系列予報等を用いて検討する。

特別な方式による航行(航空法83条の2、施行規則191条の2)

RVSM航法、CAT2,3運航、R-NAV航法は特別な許可がなければ利用できず、ジェネアビ機は基本行うことができません。(たまにできちゃう自家用機いてびっくりするのですが)。そこで今回のシムフライトでは従来のVOR航空路を中心に空路を選定します。

必要資料の入手

計器飛行方式に必要な資料をそろえましょう。基本はAIPとなります。会員登録が必要です。"Information"のパンくずリストから"pAip"のところでPDF版のAIPをフルで入手することができます。iPadに一通り入れておくと便利です。

aisjapan.mlit.go.jp

AIP入手方法

AIPのファイル構成
主に使用するのは

  1. AIP AD2:各空港のチャート
  2. エンルートチャート(ENRC):航空路図、ものすごく重たいのでPCで開くかskyvector等を使うのも手です。
  3. AIP ENR3 ATSルート:航空路
  4. AIC 飛行計画経路の変更について:ほぼ毎月更新されており、ルートが変更されていないか、制限がないか等確認する必要があります。

またAIP GEN, ENR, ADは関連法案等がわかりやすくまとまっています。 その他AIM-Jを一読すると部外者でも相当なことが把握できるようになります。半年に一回更新されるため、たくさんの関係者がメルカリで売っているので古くてもいいので一冊でも買っとくとかなり参考になるでしょう。

結び

次は経路の選定を行っていきます。