はじめに
この章ではルートの選定を行っていきます。レーダー誘導を受けない前提で計画していきます。
前回の記事
経路の選定
出発空港(RJOK)
SID
高知空港(RJOK)のチャートをAIS-JAPANより入手します。RNAVを行わない前提だと使用可能なSIDは
- SHIMNIZU SIX DEPARTURE
- KOCHI REVERSAL FIVE DEPARTURE
- URADO REVERSAL THREE DEPARTURE
のいずれかとなります。ここでは効率は悪いですがベーシックなKOCHI VORに戻ってくる「KOCHI REVERSAL FIVE DEPARTURE」で計画します。RWY32の場合上昇勾配6.0%が求められます。(標準は3.3%).
離陸の最低気象条件
離陸の最低気象条件はAD2.22 FLIGHT PROCEDUREに記載されます。旧方式の場合は「NOTE: SIDs are designed in accordance with provisional standards for FLIGHT PROCEDURE DESIGN」と記載されるため、高知のSIDは新方式であると判断できます。
今回適用可能なAVBL LDG MINIMAはILS-Z RWY32となります。ミニマは
直線進入が可能な場合:DH200ft, RVR 700m
周回進入で14に向かう場合:MDH 661ft VIS 1600m となります。さて離陸の最低気象条件についておさらいしましょう。 新基準の場合
CAT-I精密進入 | CAT-Iの最低気象条件の値に等しいRVR |
非精密進入 | 非精密進入のMDHに等しい雲高(100ft切り上げ)、最低気象条件の値に等しいRVR |
周回進入 | 周回進入のMDHに等しい雲高(100ft切り上げ)、最低気象条件の値に等しい地上視程 |
でした。
そのため離陸の最低気象条件は
- RWY32運用の場合:RVR700m
- RWY14運用の場合:雲高700ft、VIS1600m
となります。 離陸前に最低気象条件を満たしていることを確認しましょう。
エンルート
航空路
高知空港直上のKRE(KOCHI VOR)から大分空港直上のTFE(MUSASHI VOR)までのルートを考えましょう。ENRC6 瀬戸内地方のチャートを用います。ルートとしては
- KRE V56 MYE V40 TFE
- KRE V56 MARCO DCT DONKO DCT TFE
の2パターンが考えられます。 まずはV56について確認してみましょう。ENR3.1-56を参照します。
以下の点が注意事項です。
- MYEにMCA(最低通過高度)7000ftが設定されています。MYE→KREに向かう際なので特に問題はありません。
- MYE 14DMEにMRA(最低受信高度)が10000ftと設定されており、それ以下の高度で飛行するとVORからの電波が受信できなくなる恐れがあります。
- MEA(最低経路高度)が10,000ftと設定されています。10,000ft-13,000ftを飛行する場合、飛行時間-30minの酸素の搭載が必要となってきます。逆に言うと30minまでは飛行できます。今回TAS170ktで巡航を計画するしますが、MYE-KRE間の距離が61NMで十分30min以内で飛行可能と判断できます。
またAICも確認しなければならないですが特記事項はありません。
次にMYE V40 TFEを確認します。ENR3.1-51を参照します。MYE-HEIGU-TFE間は磁針路255、距離52NM、MEA4,000ftとなっております。
ここでAIC「飛行計画経路の変更について」を参照すると「mainly used for East Bound」と書いてあります!すなわち今回の西向きルートでは不適となります。
最後にMARCO-DONKO-TFEについて確認します。このような航空路に設定されていないルートは「直行経路」と呼ばれており、ENR3.5その他の経路にまとめられています。今回のルートはENR3.5-1.103に設定されており、磁針路218°、距離41NM、MEA5000ft→4000ftとなります。AICには特に記載はありません。
以上よりエンルートは、気象条件が許せば
「MYE V56 MARCO DONKO TFE」とします。
巡航高度
巡航高度選定のポイントは
- 航空路のMEA以上
- 巡航高度:IFRにおいて1,000ft以上の高度で巡航する場合は表に定められた巡航高度で飛行する
- 気象条件(着氷気象状態、タービュランス等)
基本的に西向きは偶数倍×1,000ftの高度となります。 MEAについてですが経路全体で最も高いのは10,000ftですが、この高度では酸素の関係で30minしか飛行できません。MYE以降のMEAは4000~5000ftなのでその後は6000ftとしましょう。
フライトプラン第15項
フライトプラン(飛行計画書)では様々な項目をかきますが第15項巡航速度、巡航高度、経路についてかんがえてみます。
- 巡航速度:TASをノットでNの次に4桁で1の位まで表示
- 巡航高度:Aに続いてフィート数を3桁で100ft単位で記入
- 経路:航空路、地点で示す
- 巡航速度または巡航高度を変更する場合は地点の表示に続けて斜線、その後変更後の値を記入。いずれか一方を変更する場合でも両方の値を記入する。
「N0180 A100 KRE V56 MYE/N0180A060 V56 MARCO DONKO TFE」 のように記入する。
目的地空港(RJFO)
さてルートに沿って無事にMUSASHI VORについたとします。どのような計器進入が可能でしょうか。考えられるのは
- ILS-Z RWY01
- ILS-Y RWY01
- VOR RWY01
といったところでしょう。よく用いられるのはレーダー誘導によりILS-Z RWY01を行う場合ですが、その時その時の状況で変わってきます。今回はILSアプローチを行いましょう。Z,Yの違いを見てみるとZの場合はIFのHOVERから直接ILS進入を開始しますが、Yの場合は一度RWYから離れる方向に飛行したのち進入コースに向かって旋回します。これを基礎旋回(Base Turn)といいます。使い分けのイメージとしては
- ILS-Z RWY01: 管制からのレーダー誘導を前提。RNAVを行えない今回のシムフライトでは独力でIFに向かうことができない。
- ILS-Y RWY01:飛行効率は悪いがレーダー誘導なしに独力で行うことができる。ホールディングエントリーを行う必要がある。 といった具合です。
ILS-Y RWY01 アプローチの飛び方
ILS-Y RWY01アプローチのクリアランスを受領後、進入フィックス(MUSAHI VOR)に向かう経路(トラック)の方位が転入セクターにある場合のみそのままアウトバンドへ向かうことができます。転入セクターにないときはホールディングエントリーを行う必要が出てきます。
転入セクター
基本的にはアウトバンドに対し±30°の範囲となります。最終進入コースの反方位がその範囲外にある場合はそこまで拡大されます。 今回の場合アウトバンドコースは203°なので173〜233°が転入セクターとなります。MARCO-TFEの磁針路は218°なのでフライトプラン通りに飛べばそのままアウトバンドに向かって飛ぶことができるとわかります。
ホールディングエントリー
もし転入セクター外からMUSASHI VORに向かって飛行したり、または待機を指示された場合にはホールディングエントリーが必要となってきます。局に向かうHDG(トラックではないことに注意)に応じて4つのセクターに分け、OFF SET, PARALLEL, DIRECTの3種類のエントリーを行います。なおセクター間の境目は厳密ではなく5°程度ならば当日の状況に応じて境目のどちら側のエントリーを行なっても良いです。
ホールディングの基本は標準旋回となります。標準旋回とは3°/secの旋回率で回ることで、バンク角は簡易的にTAS/10+7で求められます。例えば140kt TASでホールドするとするとバンク角はおよそ21°です。その他風に対する補正もする必要がありますが今回は割愛し別の機会にご紹介します。それぞれのエントリーの仕方は
DIRECT ENTRY:局直上通過後直接アウトバンドのコースに乗ります。アウトバンドでの飛行時間は特に記載がなければ1min(14,000ft以下)が標準です。 PARALLEL ENTRY:局直上通過後、インバンドのコースを反方位で飛行、その後旋回を行いインバンドコースに会合します OFFSET ENTRY:局直上通過後アウトバンドに対し30°ずらしたコースで飛行後、旋回しインバンドコースに会合します。
ILS-YのMUSASHI VOR直上でのホールディングパターンに当てはめると次図のようになります。
MARDOからの針路は218°のため、もし待機を指示された場合にはDIRECT ENTRYとなることがわかります。
ランディングミニマ
ILS-Z, ILS-Yともにランディングミニマ(着陸の最低気象条件)は
- CAT-I: RVR/CMV550m
- 周回進入(CIRCLING): VIS 1600m
となっています。これを用いるタイミングは①計器進入開始の可否判断、②進入継続の可否判断 でしたね。まず①で開始の判断を否とした場合には待機または代替飛行場へのクリアランスを要求します。可と判断した場合には、FAFで②の進入継続の可否判断をおこないます。ここで否とした場合にはそのままDAまで進入自体はできますがその後必ず進入復行を行わなければなりません。可と判断した場合には、途中で仮にミニマを満たさなくなってもDAまで進入継続を行えます。
ILS-Zの場合
- 進入開始の可否判断:ほんらいはIFのHOVERで行いますが、 レーダー誘導の場合はIFを通過しません。その際は最終進入コース会合前や、レーダーベクター開始前など適当な地点で判断を行います。「計器進入開始前」以外に厳密な決まりはありません。
- 進入継続の可否判断:今回のシムフライトではSONIC (FAF)でおこないます。
次にILS-Yの場合
- 進入開始の可否判断:IFと明示されていませんので今回はTFE通過時としましょう
- 進入継続の可否判断:ILS-Zと同様、SONIC(FAF)です。
目的地の代替飛行場の必要可否
目的地の大分空港に対し代替飛行場を設定しなくていい条件をおさらいしましょう。AIC 「施行規則153条の改正について」より
- 計器進入方式が設定されていること→ILS-Z
着陸の到着予定時刻の前後2時間の間、次に掲げる気象条件が確保されることが、利用可能な気象情報(TAF,飛行場時系列予報等)より示されること
雲高が進入限界高度として定められた最小の高度より少なくとも300m(1000ft)高いこと→DH 200ftより 雲高 1,200ft以上
視程が最低気象条件として定められた最小の値より少なくとも4,000m以上もしくは5,500m以上の値を示すこと→RVR550mより視程4,550m以上
まとめ
今までの内容をまとめていきましょう。
SID: KOCHI REVERSAL FIVE DEPARTURE
- 経路、高度、速度:N0180 A100 KRE V56 MYE/N0180A060 V56 MARCO DONKO TFE
- 計器進入:ILS-Z RWY01 or ILS-Y RWY01
- 離陸の最低気象条件:RWY32運用の場合→RVR700m、RWY14運用の場合→雲高700ft、VIS1600m
- ランディングミニマ:RWY01運用の場合→RVR/CMV550m、RWY19運用の場合→VIS 1600m
- 目的地の代替飛行場の要否:RJFOでのETA前後2時間において雲高1,200ft以上、VIS4,550m(通報間隔的に実質4,600m)以上
むすび
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