はじめに
特に他人と答え合わせしたり、パイロット入試問題集のようなもので解答を確認したわけではありません。多分大丈夫と思いますが、解答の利用は自己責任でよろしくお願いします。
模範解答、関連分野
2020 | ||
問題番号 | 解答 | 関連単元 |
問7(a) | 4 | 等加速度運動 |
問7(b) | 3 | エネルギー保存 |
問8 | 5 | 運動量と力積の関係 |
問9 | 5 | 単振動 |
問10 | 5 | 剛体のつり合い |
問11(a) | 2 | ドップラー効果 |
問11(b) | 3 | ドップラー効果 |
問12 | 2 | 熱力学、機体の法則 |
問13 | 5 | 直流回路、キルヒホッフの法則 |
問14 | 3 | 電磁誘導の法則 |
問15(a) | 2 | 過渡現象 |
問15(b) | 5 | コイル、コンデンサー |
解説
問7
正答は(a)が4,(b)が3。2次元の問題は二つの成分に分解して考えるのが基本である。鉛直(上向きを正に軸をとる)方向は初速で下向きに重力を受ける。よって、鉛直方向は下向き加速度の等加速度運動を行う。(4) また、等加速度運動の式より
また、この物体には保存力である重力以外の力が働いていない。したがって、力学的エネルギーは保存される。 よって、(3)
ちなみにこのとき水平方向には力を働いていないので等速運動を行う。
また鉛直方向の運動方程式は
よって。上向きを正と取っているので、やはり下向きに大きさgの加速度が発生することが読み取れる。
このように力学の問題では「力を図示」「初期条件の確認」「運動方程式」ができればどのような問題でも原理上解くことが可能である。
等加速度運動
- 加速度 :単位時間当たりの速度増分
- 速度 :単位時間あたりに進む距離
- 距離
それぞれについてを変化量を意味する添え字、を時間とすると(例えばは時間の変化量を表す)といった関係となる。
- 等加速度運動:加速度が一定。速度は、進んだ距離はとなる。
- 等速度運動(等速直線運動):速度で一定、すなわち加速度。よって距離は
重力加速度
物体が重力により鉛直方向(地面に垂直な方向)に受ける加速度。
運動の3法則
- 慣性の法則:力[N]を受けない物体は静止もしくは等速度運動を行う。(静止している場合も「速度0」という等速度運動となっている。
- 運動方程式:であらわされる。は質量、は加速度、は力。質量とは物体の加速のされにくさを表し力は物体の運動を変える大きさを表している。地球から月に行ったときに変わらないものが質量、1/6になってしまうのが力(重量)である。ニュートン力学の中で最も重要。
- 作用反作用の力:二つの物体が互いに及ぼしあう作用と反作用は大きさが等しく、逆向きで2物体を結ぶ方向に働く。これにより運動方程式から運動量保存則などを導くことができる。
運動エネルギーと仕事の関係
- 運動エネルギーであらわされる。速度で運動する物体が持つエネルギー。単位は
- 仕事力Fがその力の方向にだけ動いたときに与えられるエネルギー。加えられたエネルギーは運動エネルギーや位置エネルギー、熱エネルギーなどに変換される。当然単位は運動エネルギーと同じ
速度で運動する物体に仕事が加わって速度がに変化したときに以下の関係が成り立つ。これを運動エネルギーと仕事の関係という。
力学的エネルギー保存則
重力も当然ながら力なので「運動エネルギーと仕事の関係」がなりたつ。例えば高さから物体を落とした時に、重力がする仕事は。よって
これでもよいのだが力の中には保存力と呼ばれる、仕事が力の経路によらず最初の「位置」と最後の「位置」だけで決まるものが存在する。重力はこれに含まれる。詳しくは割愛するがこの性質に着目し、位置に依存する新しい関数を導入してうまい具合に保存力がする仕事を表したものが「位置エネルギー」というわけである。 重力による位置エネルギーは基準点からの高さ(どこでもよい)を用いてであらわされる。物体に重力のみ働くとき運動エネルギーと位置エネルギーの和、すなわち力学的エネルギーが一定となる。これを「力学的エネルギー保存則」という。
問8
正答は(5)。板に平行な方向は速度一定であり、力が働いていないことがわかる。(ちなみにこのことから、摩擦力が発生していないこともわかる。)したがって力積も発生しないので、垂直な方向のみ考えればいい。板に垂直な成分について、板に向かう方向を正とすると球の速度はから、反対方向のとなっている。また板が受けた力積をとすると、作用反作用の法則より、球はの力積を受ける。(※板に近づく方向を正としていることに注意)。したがって、運動量と力積の関係より
運動量と力積の関係
- 運動量:。質量と速度の積であらわされる量。
- 力積:。力と時間の積であらわされる量。物体に同じ力が働いていても作用する時間が長ければ長いほど、物体はより影響を受ける。
について、両辺にをかける。
またより
ここで質量は当然一定。したがって、
となり、運動量の変化量が作用したに等しいことが示された。
問9
正答は(5)。問題文より質量、復元定数。よって、周期は
物体に働く浮力
物体に働く浮力はアルキメデスの原理によって示される。すなわち、「物体が排除した体積」×液体の密度×重力加速度である。今回の問題の場合、
- 物体が排除した体積:
- 液体の密度:
なので、働く浮力は である。
浮力に関しては別の解釈することも可能である。水深での水圧について考察する。水深で水面まで伸びる液柱を考える。 断面積はとする。底面には大気圧と高さの液柱の重量が働いており、その大きさはである。したがって水深での圧力は
となる。
さてここで液中に物体を放り込み、深さhまで沈み込んだ時に発生する力について考えてみよう。物体の上面には大気圧、下面には水圧、側面には大気圧や水圧が働いている。ここで側面についてはお互いに打ち消しあうので上面下面に働く圧力のみである。底面積をとすると、この物体に働く浮力fは
となり、アルキメデスの原理と等価な答を導き出すことができた。なお、この上向きの浮力fと釣り合っているのは物体の重量であり、
という関係が成り立っている。
単振動の運動方程式
単振動とは運動方程式が
であらわされる運動をいう。を復元定数という。は振動の中心だが、入門レベルではたいてい0となっており、
という形になっている場合が多い。これを変形すると
ここで導入したは振動の角振動数と呼ばれるものであり、単振動を円運動に置き換えた場合に単位時間あたりに進む角度である。一周はなので、周期となる。今回の問題の場合、加速度をとすると運動方程式は
問10
正答は(5) ABの中点をDとする。棒の重心はDに作用し、力の大きさは。また、BC間の水の重量(質量×g)はでその作用点はBCの中点である。したがってC点回りのモーメントのつり合いより
問11
正答は(2)。観測者が静止し、音源が速度で近づく場合、元の振動数を、音速をとすると、観測者が観測する振動数は
で示される。よって、
よって(a)の答は(2)。次に(b)について、音源が遠ざかるときはに負の値を入れればよい。すなわち、
よって(b)は(3)。
波の式
波には次の3要素が存在する。
- 速度:波の進行速度
- 波長:波一つ当たりの長さ
- 振動数:一秒間当たりに放出される波の数。なお、単位はと次元が等しい。
一秒間あたりに個の波が発生し、一つ一つの波の長さはmなので、以下の関係が成り立つ。
ドップラー効果
ドップラー効果は音源が近づく場合を正、遠ざかる場合を負とした際に、音源の速度、音速、元の振動数を用いて、
とあらわされる。この導出を行ってみよう。 音源が近づく場合
- 時刻からまでの動きを考える。
この間音源は進む。(ちなみに音源のイラストは音叉がモチーフで高校時代の恩師が良く描いていた。)
t=0で放出された波は進む。
この間に放出された波は長さとなって、観測者に届く。この中には個の波が含まれている。
したがって観測者が観測する波の波長は
となる。
- 音速Vはそのまま。
- よって振動数は
音源が遠ざかる場合
こちらも近づく場合と同様に考えればよい。放出された波の長さはとなるので、
問12
正答は(2)。 ピストン内の圧力は加熱前後で一定。圧力をとすると、ピストンに働く力のつり合いより
また、加熱後の機体について気体の状態方程式より、
2式より。よって(2)。
気体の状態方程式
- 圧力
- 体積
- モル数:気体分子の個数を表す。1molあたり1個に相当。はアボカドロ数で6.02×1023ある。
- (普遍)気体定数:
- 絶対温度:単位は[K]。セ氏温度℃に273を足せばよい。「温度」とは分子の熱的振動である。絶対零度、すなわち-273℃では分子の熱的振動が完全に止まっている状態を指す。
なお、これは「理想気体」というものを仮定しており、現実の気体では完全には一致しない。
検算法(次元確認)
航空大やかつてのセンター試験のような選択式の物理の問題で難易度が低いものは選択肢の単位をみることでも絞れ得る場合がある。たとえば「長さ」を聞かれているにもかかわらず、選択肢の単位が「s(sec:秒)」ならば答えになりえない。この問題について考えてみよう。
基本単位
ここでは、基本となる単位として下のものを上げる。
- 長さ:m
- 時間:s
- 質量:kg
- 温度:K
これらを用いて各物理量を表してみよう。
- 力[N] 運動方程式より。よって
- 圧力[Pa]
- エネルギー、熱量[J]
ここで問題文を見てみる。
(2)の選択肢について
となり、単位は確かにあっている。
(1)については(2)に平方根を付けたものなので単位はとなり、適当でない。
(3)については
となり適当でない。
(4)は(1)と同じ単位となるので不適当。
(5)は(3)と同じ単位となるので不適当。
よって、計算しなくても単位が適当なのは(2)しかないのでこれによっても正答を導き出せる。
問13
正答は(5)。 回路は対称な形をしているため、抵抗R1,R3を流れる電流は等しくなるはずである。また、R6とR7、R4とR5についても同様である。(abを中心にひっくり返してみるとわかりやすい。)抵抗R1,R3を流れる電流を、抵抗R2を流れる電流をとする。節点cについてキルヒホッフの法則より、抵抗R4,R5を流れる電流はそれぞれとなる。また、節点d,eについてもキルヒホッフの法則よりR6,R7を流れる電流はそれぞれともにとなる。
経路I,IIについてそれぞれキルヒホッフの法則より
よって
全体を流れる電流は。よって全体の消費電力は
よって(5)。
キルヒホッフの法則
そろそろ基礎事項までもいちいち解説するのが面倒になってきました。
こんなかんじです。
問14
正答は(3)。 電磁誘導の問題はいくつか解き方が存在しますが、はじめにファラデー電磁誘導の法則
を応用して解いてみましょう。これはコイルに適用するものだと出てくるが、今回の問題のような導体棒にも適用可能である。
- :磁束
- :磁束密度
であり、である。B一定なので、となる。このSは回転運動によって導体棒が通過する面積である。
したがって、時間経過したとして扇形の面積
よって、回転運動をとる導体棒に働く誘導起電力の大きさは
ここで問題に戻る。PQもMQも磁束密度B、角速度は共通であるから、それぞれの誘導起電力の大きさの比は通過する面積比と同値となる。
よって(3)
問15
正答はa:(2),b:(5)。
まず電源をONにした直後について考える。図は等電位のところを同じ色で塗り分けている。コンデンサーC1,C2は電荷がたまっていないため電圧が0、すなわち電流は流れていない。コイルは流れる電流が変化する、すなわちのときに誘導起電力が発生し、変化を小さくしようとする働きがある。電源を付けた直後は電流が流れようとするためそれを妨げる向きに誘導起電力が発生し、全体としては電流が流れなくなる。
時間が経過すると徐々に電流が増えていき一定値になる。このとき、コンデンサーに流れる電流は0。また電流値は一定のためコイルに誘導起電力は発生しない。したがって回路全体を流れる電流Iはそのまま抵抗R1,R2をとおるため、
となる。
よって(2).
また、コンデンサーC2の両端の電圧は抵抗R2の両端の電圧に等しく(黒線の電位と青線の電位)。よって蓄えられた電荷は
よって(5)
解説記事一覧
下の記事内にまとめてあります。